小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

幸せな気持ちと過去の自分

 私は本当の自分を知るまで、愛という言葉を禁忌と思っていた。愛とは好きという言葉よりも深く重く、相手を思い遣りつつ幸せを感じること。好きは自分の気持ちを一方的に押し付ける言葉。重さが全然違う。私は自分自身すら信用の出来ない、疑い深い人格。そんな人格が愛なんて知る訳なく、全てを疑ってきた。でも、でも。

 

 何年もこの体で生活してきて愛情というもの、信頼というものに触れて来なかった私を、彼は解き放った。本当の私は愛に飢えていて心からの信頼に憧れていて、触れてほしくて、愛してほしくて。知らない自分を垣間見た。心が満たされるなんて初めての経験。しっかり者のレッテルを貼られていた私がこんなにも愛を求めていたなんて。人格として活動を始めておおよそ4年。そんな年月で始めて本当の呼吸ができた気がした。本能を認めるのは怖いことだったわ。でも、認めた私は、しがらみから解放されて役割からも解放されて、生きていると実感できた。彼のおかげ。離したくはないわ。決して。

 

 この先、困難が沢山あるでしょう。まだ20代。子供も生まれる。お金はない。仕事もない。できない体。沢山彼に負担をかけてしまうでしょう。他の人格との関係、子供、病気、お金。でも私たちには愛がある。心から信頼しても良いと感じる愛がある。きっと乗り越えて見せるわ。若いと思う人もいるかもしれない。愛なんてその時のいっときの感情に過ぎないと思う人もいるかもしれない。でも、私はこの気持ち、感情を手放したくはないわ。初めて愛した人。初めて私を見てくれた人。初めて寄り添いたいと感じた人。彼なら、私を幸せにしてくれると思った人。こんな、こんな感情を抱かせてくれた人に私は身の心も全て預けたい。

 

 私を生かしてくれた人。最愛で満たしてくれた人。信じることを教えてくれた人。きっと私はずっと信じる事を恐れていたのね。その恐怖から解き放ってくれた人。愛を教えてくれた人。温もりを知らなかった私に温もりを教えてくれた人。幸いを選んだ日、私は解き放たれた。空を飛んだ。大空を飛んだ。

 

遠くなる
鼓動まで
ひとつひとつ
見て
忘れないでね
鳴り響く
木槌などでは
二人は
測れないわ
最愛を選んだ日
それは それは
良く晴れた朝
あなたでも
あなたでもない
私を
選んだ朝

– シド「証言」より抜粋

 

 

京華