短編
轟音の中、台風が私の町を飲み込んでいた。秋になるとよくある台風。
生きることへの執着がなくなってきた頃に、彼女は唐突に現れた。
朝起きて目に付いた涙の跡をカリカリと指で取る。今夜の夢も良いものでは無かった。壊れそうになる毎日を必死に耐えて耐えて、夜にはこてんぱんにされる、そんな毎日。終わりにしたくても、そんな勇気がない。怖くて怖くて自殺なんてできない。
16時半。あたりは夕暮れ。騒がしい駅前商店街を抜けた先の、小さな裏路地。秋風に揺れる金のセミロングの髪を払い除けて、彼女は降り立った。真っ白なロングワンピースがふわりと靡く。少し汚い路地の砂埃を円状に弾き飛ばし、これまた真っ白なハイヒール…
砂漠に黒い蛇が一匹。オアシスに向かい、急いでうねる。オアシスは、楽園だ。遠くの方に見える緑に、蛇は、オアシスが近いことを悟る。スピードを上げよう。手足のない蛇は、地を這うことしかできない。それでも急いでオアシスに向かう。オアシスには何が待…
夢から醒めて私の周りには誰もいないことを悟った。寂しい心の声。いつも一緒に居てくれてとても嬉しい。いなくなるとどうしても辛い。起きてよ。起きてよ。隣にいてよ。怖いよ。私は小さなことり。
声が呼んでいる。心の声。どこから聞こえて来るのかわからない心の声。私は答えたいと思った。歩く速度が速くなる。呼吸が荒くなる。冬の坂道。私は行く当てもないのに走った。
息を殺して歩む道には憎悪がたくさん。囚われないように戸惑いながらも、道を進む。ここはどこか、この場所は何なのか、先には何があるのかさえ分からぬまま、暗い憎悪の道を進む。怖い。感情が溢れる。それでも進まなくては、ここに囚われてしまうようで、…
昼下がりの暖かい日。お昼を少し食べて、昼寝して、起きてから無性に遊びたくなったので、下からご主人を見上げた。ご主人は座って何かカタカタしている。本当は主人に甘えたい気持ちをグッと堪えて待つ。大好きな主人に1度怒られてしまったから、我慢する…
夕焼けの太陽が眩しい。 帰宅ラッシュを抜けて俺は商店街を歩いている。今晩のおつまみはカニクリームコロッケだ。惣菜屋がとにかく美味しい。行きつけになりかけてる俺。店員さんにはもう顔覚えられてるからなぁ。美味いから、いいんだけど。肉の焼ける匂い…
今朝の目覚めは最高で布団が心地よくて、でも寒くて中々布団から出れなかったの。最近、暖かかったから油断してたわ。ポチャッコに埋もれた家でぬくぬくしてから私は仕方なくお風呂に入った。 心地よいお風呂、うっとり40℃のシャワーをかけて一休み。ゆっ…
題 ゆったりとすぎていく日々の始まり 朝、目が覚めると、冬の朝日が目を刺激してくる。あれ、昨日はカーテン閉めなかったのかなと、思いつつ、白い薄地のカーテンを閉める。少しは朝日が遮られて白い壁の家がもっと白く感じられるぐらいにはなった。目への…