小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

短編 小鳥の鳴く声に

 夢から醒めて私の周りには誰もいないことを悟った。寂しい心の声。いつも一緒に居てくれてとても嬉しい。いなくなるとどうしても辛い。起きてよ。起きてよ。隣にいてよ。怖いよ。私は小さなことり。

 

 人しか知らないことり。外の世界ってどうなの?知らない知らない。朝の開店前、餌をいただくために頑張って鳴いてご褒美をたまにもらって喜んではの繰り返し。毎日、いろんな人に会うけど、誰も触れようとはしない。私はこんなにも寂しいのに伝わらない伝わらない。燕は大空へ飛んで行く。翼のない私は仕方なく巣で大人しくしくして行かねねくてはならない。生きることは心ではしなくてはと思うのだが、もう体が動かない。声はもう誰にも聞こえない。言葉は発することはできない。愛はどこに行ってももらえない。私はそのことを悟ったのだ。

 

 愛が欲しい。親からは完全に見放され、飼育員が無感情に私たちに餌を与える。欲しくてたまらない。愛が欲しくてたまらない。最後に宿った心のカケラ。愛が欲しい、愛が欲しい。心が欲しいと夕方におやすみ。憂鬱な毎日、壊れかけの毎日。誰か、誰か。声を、愛を。ココロニコエガナイ。

 

 夜に飛ぶ鳥はいないと人は言う。それは確かにそうなのだけれど、歌声は夜にも盛んに聴こえるの。鳥は眠る。人と同じで眠らないことはない。でも、聲はずっと鳴き続ける。簡単な話ではあるけど、私には羨ましくって羨ましくって仕方ないの。友が親が、仲間が、いてくれるなんてなんて羨ましい事なんだろう。籠の中からいつも聴くの。聲を。所詮、ペットな私には何にもない。

 

 鍵がかかったこの場には鳴き声なんて悲鳴みたいなもので、『ママ』や『ココヤダ』や『出して出して』なんかばっかり。昔を思い出す。私は鍵の掛かったこの空間で一人泣いていた。でも気づいてしまった。ナイテモイミガナイ、と。心に鍵をしてしまった。この鍵を開けてくれる人なんていない。ああ寂しい。寂しい。心の悲鳴。それすらここにはもうない。鍵の掛かったこの場にはもう、開ける方法なんて無いのだから。

 

 そこから、私は鳴かなくなった。泣かなくなった。

 

 

 ダレカナカセテヨ。ココロノカギヲアケテ。

 

 

 小鳥遊京華