小鳥の遊び場

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久々ぶりの感情

 人格にティアと言う子がいる。彼女の葛藤、恐怖心、怒り、悲しみが私に流れてきた。久々の人格感情の読み取り。理解なんていらない。ただ声が欲しかった。意思を伝えたかった。それだけの悲しき野獣の雄叫び。

 

 名もなき野獣の話。

 

 理解できない世界に突然放り込まれた。1匹の雌。野獣。生きる為に食べることと寝ることだけを繰り返した。そのうち、近くに何かいる事がわかった。音のない世界。人?男性?この人は何?よくわからないまま眠りに落ちた。

 

 次に起きた時、彼はまだいた。放っておいて欲しくもあり、このよくわからない世界での恐怖心を解消したかった。味方が欲しかった。目覚めるといつもいる彼。餌をくれる彼。縋った。彼といる時は何故か恐怖心がなくなって安心を覚えるようになった。それはまるで母親に会えたような気持ち。温もり。この場に彼がいる限り恐怖心からは解き放たれた。嬉しかった。餌をくれる。美味しい餌。甘かった。何にも感じずに食べた餌とは違くて、冷たくて、甘くて、心が安らいだ。そのうち構って欲しくなった。何かやっているようだけど、そうじゃなくて自分だけを見て欲しい。訳のわからないまま、それを排除しようとした。彼は困っているようにも見えたけど、こっちを向いて欲しかった。遊んで欲しかった。寂しかった。出っ張りを噛むと彼は起きた。嫌がっているようにも感じたけど、寂しさを埋める為に噛んだ。そしたら彼はこっちを見てくれる。優しく撫でてくれる。餌をくれる。自分を見てくれる。美味しい餌を見つけた。食べたい。でも彼はくれない。なんで?わからない。彼は自分をおいてここから去った。怖い。見捨てられた?また恐怖心に怯えなきゃいけないの?怖くて叫んだ。吠えた。彼は帰ってこない。不思議なものを見つけた。これは彼が前に使ってたやつだ。叩いた。そしたら、彼の声が聞こえた。寂しいを伝えたくて吠えた。必死に吠えた。早く帰ってきて欲しかった。吠え疲れてお気に入りのふかふかに頭を沈めた時、彼は帰ってきた。二度と離したくはない。恐怖心から逃れるように彼の手から渡された餌を食らった。美味しくはなかった。彼はちょくちょくいなくなる。その度に怖くて吠える。でも、不思議なものを使っても前のようには声は聞こえないし、だんだん彼がいなくなる時間が伸びていった。怒りが湧いた。

 

 やり場のない怒りが自分を包んだ。いなくなって欲しくないのに、構って欲しいのにいなくなる彼。あの手この手で彼の気を引こうとしてるのに。なんで?なんで?怒りは自分に向いた。自分を噛んだ。

 

 構って。わかって。お腹空いてるんじゃないの。こっち見て。遊んで。

 

 気持ちを伝える方法が叫ぶしかなかった。吠えるしかなかった。違うの。わかって。

 


 声が欲しい。


 悲しき野獣の雄叫び。

 

 

京華