小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

煙草の煙のように

 夢を消したくて、タバコに火をつけた。煙はすぐ上にあがり、分散して消えた。書いてからも味わい続けるダンスの予兆。知らない人と添い寝した今。私は何と戦っているのだろう。消したい過去が次から次へとやってくる。破壊の夢。2日連続はきついものがある。致し方ない。私にはこれしかないのだから。タバコを吸って吐いて、腕に押し付けた。根性焼き。痛みが私の全てを消し去ってはくれないのを知りつつやり切れなくて、火を押し付けた。

 

 痛みは消えない。痕も消えない。それでももう1本タバコを吸う。私の戸惑いも恐怖も過去も未来もすべて、タバコの煙のように消えてしまえばいい。悪夢は見たくない。もう、これ以上見たくはないのにやってくる。白昼夢であっても、楽しい夢なんてほとんど無い。薬なしでは寝られない私の体は1時間みっちり悪夢を見せて、私を何度も何度も地獄に叩き込む。怖いと思っても起きることは無い。泣くことすら忘れたこの体は一体いつになったら、楽になるんだろうか。

 

 夢が正夢にならないように私はタバコを吸って気を紛らわす。煙が空へ上がっては消え上がっては消え、繰り返し。タバコならなんだって良かった。ただ、気分転換したかっただけ。くだらない悪夢に私は踊らされている。

 

 夢は現実にはならないだろう。と思っていた時があった。でも、飛び降りの夢は現実として私を襲った。痛みなどない。感覚がなくなって動けなくなってしまうばかり。

 

あの頃の私夢を見てたの。この世界は薔薇色って。気づけば私、夢の迷い子。悪夢はまだ終わらない

 

 まさにこれ。夢の迷い子。起きている時間だけが私の安泰を許してくれる。悪夢は毎晩、私を締め付ける。怖いと思っているのに毎晩。インキュバス、私を解放してはくれないの?いつになれば私は開放されるのかしら。

 

 タバコが消える。空へ煙が分散して、押し付けた腕だけに痛みが走る。恐怖心はもうない。夢は悪夢は悪夢だけで終わらせて欲しい。現実は綺麗なままでいたい。現実も大概、悪夢と変わらないのは分かっている。分かっているけど、もう、私の世界を壊さないで欲しい。願いはタバコの煙と一緒に消えた。どうせ、また明日も悪夢を見せてくるインキュバス。漠が本当に夢を食らってくれるなら、どうか、悪夢を食い破ってほしい。そんな馬鹿みたいなことを考えながら私はまたタバコに火を付けた。

 

 

京華