小鳥の遊び場

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幸せを願う

 優しい人には優しい人が来るんだよ。でも、なんで私の周りの優しい人はいなくなっちゃうんだろう?私が優しい人ではないからかな。

 

——違う。

 

 私は私に関わった全ての人の幸福を祈っているの。流石にバスの運転手さんとかは無理よ。でも、一度でも関わった人の幸福を祈っている。

 

 

 行方不明のりーちゃんの言葉。ベルリンの壁は崩壊することはないけど、彼女は壁の向こうから幸せを祈り続けているに違いない。

 

 今は何処にいるのか。周りは女王蜂のいない蜂のようにチリジリになって闇雲に探しているわ。見つかるわけないのに。なんせ彼女にはベルリンの壁がある。人との関わりを絶とうする彼女に接触するには、まずはベルリンの壁を壊さなくてはいけない。例え壊れてもその向こうに彼女がいる保証は無いのだけど。やるしかないと私は思うのよ。

 

 長年親を思いやり、心配し、親だけを頼りに生きてきたりーちゃん。特別な存在の親以外は、全て弾いてきたりーちゃん。心の本音を隠して隠して、それを懺悔するかのように、いなくなった彼女。疲れ果てて眠りについたこの子を誰が咎めるんだか。20年近く統括をして一生懸命生きてきたのだもの。幸せになる権利はあると思うの。彼女の幸せが一体どこにあるのだろうか。

 

 

 私は彼女を無理矢理出したくはないのよ。困ることはたくさんあるわ。それでもりーちゃん自身が自ら望んで出てくるまではこのまま、エル君にはわるいのだけど居させてあげたいのよ。私も甘やかして貰った。今度はりーちゃんが甘やかされても良いと思うの。夢の見過ぎかしら。生きるにあたって彼女は頑張ったわ。少しぐらいの休憩ぐらい許して上げたいわね。

 

 みんなが困っているからりーちゃんを呼ぶなんて理不尽な感じがするの。幸せを願う彼女の幸せを私たちが願うことはしないのかしら。確かにかがりちゃんも大分消耗しているのを感じるわ。エル君もかなり消耗していることでしょう。でもその全てを背負わせたのは紛れもない私たちなのよ。休憩ぐらいあげたって良いでしょう?

 

 行方不明のりーちゃん。幸福であれと願い続ける。自分たちがどんな最悪を見てたとしても。楽園はあると祈り続けている。ベルリンの壁は崩壊する事が彼女の幸せに繋がるのだろうか。私には分からない。

 

京華