小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

逃げる夢

 息を殺して歩む道には憎悪がたくさん。囚われないように戸惑いながらも、道を進む。ここはどこか、この場所は何なのか、先には何があるのかさえ分からぬまま、暗い憎悪の道を進む。怖い。感情が溢れる。それでも進まなくては、ここに囚われてしまうようで、震えながらも歩く。風もなく、ただ声だけが響くこの憎悪の道。悲鳴、泣き叫ぶだけの声。憂鬱な怖い場所。歩みは止めない。囚われたら終わってしまいそうで。

 

 道の先には扉があった。3つの扉。

 1つは緑の扉。風が吹く扉。私の制服のスカートを揺らす場所。

 1つは真っ黒の世界に光が差し込む場所。光が扉の向こうから差し込むのが見える。私の黒髪に光が反射し、ここは何処かようやく見えた。ここは嘆きの顔がびっしりと描かれた場所だった。囚われずに進んで良かったと少し安堵する。

 最後の1つは髑髏の描かれた扉。きっとそこにもまた怖いことが待ち受けていそうで、無意識に私は目を背けた。

 進むなら光の差す扉だろうか。風もまたいい。どちらかを手にしようか少し考えるも、私は光の差し込む扉を選んだ。

 

 光の差し込む部屋の中に足を踏み入れて後悔した。そこは光なんてなかったから。実は光と思っていたものはただのランプ。ここは辺り一面血の着いた部屋だったのだ。引き返そうと後ろを振り返るも、もう、そこには扉はなく、暗い壁があるだけだった。血のべっとりと付いた部屋を私は歩むしかないようだ。また怖い感情が溢れる。今更ながら風の吹く扉にすれば良かった。今更そんな後悔をしても、もう扉はない。また戸惑いながら私は歩むしか無かった。

 

 先を見ても赤、赤、赤。進んでも進んでも、赤が広がる世界。ローファーがぴちゃぴちゃと赤を跳ねながら、私は進む。時折、天井から赤が降ってくる。それを避けながらランプがある方へとがむしゃらに進む。走ってみた。ローファーに赤が着くのを無視して走った。でも、先が見えない。体力の無駄だと私は走るのを辞めた。ハァハァと息が上がる。ぴちゃっと私の手に赤が落ちた。ヌメヌメした赤。鉄臭い赤。これは、と、ランプに手を翳した。あ、血だ。元から怖かったのにもっと恐怖心が募って慌ててブレザーで拭った。怖い怖い。感情が吹き出して私を支配する。

 

 もうこんなとこやだ!

 

 悲鳴を上げながら必死に走った。息を殺すのも疲れも全部忘れて走った。ただ怖くて怖くてしかたない。上から降ってくる血も関係なしに走った。半袖の腕に血が飛び散り、ローファーに血が跳ねた。ただただ、怖かった。

 

 これは夢。私の夢の話。