小鳥の遊び場

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蛇にピアス

 痛いけど着飾りたい気持ちが彼を動かす減量力になる。ゆっくりゆっくり体を捻らせて、動く様はまるで蛇のように感じて。正直気持ち悪いわ。でも、彼にはこれがカッコいいと感じているようなのよ。不思議ね。穴なんか必要ないのに。曲がりくねる体を必死に抑え込み、自信を着飾ろうとする彼。

 

 彼については謎が多いの。私でもまだ理解できてないところが多いわ。なんせ彼に私は一度消されたのだから。また出てきてしまったのだけど。無駄な努力だったみたいね。彼は着飾ることが好き。何故なら彼自身が不安定だから。でも、眼鏡を新調し、本を買い、彼独自の世界を作ろうとし始めて、やっと、安定感がでたのね。ピアスは開けはしたけど、前ほど多くはないわ。痛みも感じられるようになったのかしら?今日は2つで済んだわ。


 一度遁走という解離症状が出た時にも彼はありつづけた。

 

—————みんな俺よりバカだ

 

 1日で終わらせた引っ越し。インフラの停止。すべて一人で行った彼は、正直、すごいと思うわよ。でも、個性があまりない。薬、病院、生活、買い物。緊急時になったときには莫大な、力を発揮する彼。個性はまた1から作り出せるでしょ。


 コンプレックスの塊のような彼だけどね。ほんとうは、コンプレックスの塊なんて必要ないのだけれど、持っている物は人それぞれ。仕方ないことだわ。高い理想という階段を毎回登る為なら努力を、惜しまない。彼のすごいところはそこ。命の危機察知能力もまた強いように私は思うわ。行動力、洞察力、それだけは高いはずよ。


 欠点は後を考えられてないところね。突発的にやるものだから、かなり突然なくなっていることが多いわ。お金は本当に壊滅的ね。人間関係も。あと、遁走癖があるのも困り物だわ。この体を、労わることをしないのもよろしくはないわね。早くスピードが命だ。と彼はよく言うけど、それでも、限度があるわ。やれること、やれないことの区別をしっかりしないと困るのよ。

 

 彼、潤は蛇。飛びつく時には一瞬で。普段はのろのろと地面を這っていく。恐ろしい毒を持ちつつ隠しているゆっくり這っていく蛇。

 


  京華