小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

月に野良犬

 逃げる兎は獲物にされ食い破られる。悲しい弱肉強食。美味しいものを求めて這いずり回る野良犬の様に、夢を追う私。苦しいが全面的に出てきて、彼の事を忘却した。壊される夢。自ら美味しい獲物を逃した私。記憶が飛んだり戻ったりして夢どころじゃない。追い続けたい。でも、わからなくなる。書きたいものは何?苦しみと記憶がリンクする。壊れろ。壊れろ。繰り返す言葉は嘘をつく。生きている心地がしない。傷でも付けて確かめようにも、既に傷だらけの身体のどこに傷をつけようか。壊し壊される。無限ループ。私はいつ、楽になれるのか。もがき苦しんで、野良犬は月に遠吠えする。

 

 夢から離れて現実を見る。恐ろしい夢はもうない。打ち止めされた現実と向き合いながら、私は今日を生きる。物を喰らい、性欲と理性を働かせ、無くしたはずの心を取り返しに動く。相も変わらず、負け犬の様に遠吠えする私は野良犬。愛を知らず、息を吸って吐くだけの野良犬。負けしか知らない野良犬。愛はどこに、落としたのか。もしくは取られたのか。隣にいる兎は愛を教えてくれるのか。食い破ったその事が間違いだったのか。今宵も負け犬の遠吠えが響く。貴様は何をしたいのか、餌を探して這いずり回るだけの野良犬は、分からない。荒い呼吸だけが現実を教えてくれる。理性を手放せば楽に生きることが出来るのかもしれない。呼吸を止めれば。違う。それは楽になりたいだけの負け犬の中の負け犬に成り下がるだけだ。骸に目を付けてくれる人なんか居ない。食らいつく、生に。負け犬は負けていても生きるしかない。野良犬の遠吠え。狼にはなれぬ、犬の遠吠え。

 

 未来を見れば夢の中に引き摺り込まれる。未来など今を直視できない野良犬は無理な話。よくよく考える。餌を探して今日を生きる野良犬に、未来など、優しい未来などありはしない。汚いからだに誰が優しくするのか。生き汚い野良犬に誰が心を与えるのか。欲しいものは何なのか。兎にいっそなれたらな良かったのに。追い追われる弱肉強食。夢など未来など考える方が間違いなのだ。喰われる物は喰われる。例え、昨日まで安らかな世界に居たとしても、現在は喰われるだけ。未来などそんなもの。夢などそんなもの。

 

 生きるには心を取り返していくしかないのか。優しい心を与えてもらうしかないのか。そんなもの夢物語。それでも野良犬は月に遠吠えする。生きるために、心が欲しい。

 

 

京華