小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

ひと時の幸せを噛み締める

 ある日の昼下がり。寒い冬が近づく11月の日曜日。天気は良くて日差しが窓から降り注ぐ、ふわふわとした陽気のこの日。私は今、最愛の人の膝枕で幸せを感じている。猫のように擦りついてしまうのは仕方ないわよね。だって愛しているのだから。

 

 この一時は蝶の羽ばたきのように一瞬で消えてしまうほど儚い。私には別の人格が多くいてその子たちと交代をしてしまえばこの幸せは終わってしまう。暖かい膝。髪を撫でてくれる優しい手。温度、眼差し、声。全てが愛おしく、幸せを感じるの。でもきっとこの時間はすぐに終わる。哀しい愛の形。それでもいいの。私にはこの感情をしまって置けるスペースがまだ、こころにあるのだから。儚い幸せは私の感情と共に永遠に失われない。

 

 私には他の子が出ている時の記憶はない。というか、あえて見ない。感情が流れてくることはあってもその光景を見ることはしない。何故なら、私は私自身すら疑ってしまうから。私以外の人の記憶なんて信用出来るわけないじゃない。だから、私は私が表に出て感じたもの、見たもの、した事しか信用しない。でも、彼は違う。私の唯一の信用出来る人。あなたのためなら私はどんな事でもしてみせるわ。例え国を敵に回しても。そんなことさせやしないけれども。害は打ち払いましょ。厄介は消し去りましょ。このひと時の幸せを邪魔なんてさせやしないわ。全霊を込めてあなたを守りましょ。私はどんな事があってもあなたの味方であり続けたいわ。夢でも幻でも構わない。この時間を大切に、大切に噛み締めて行きましょ。

 

 言葉ではいいようのないこの幸せ。どんな風に体現して行けばいいのかしら?私には文しかないのだけれど、この幸せを文にするのは大変ね。でも、愛してる事には変わりないのよ。ああ、愛おしい時間。愛おしい温度。愛おしい声。愛おしい香り。全てが愛おしい。夢はひと時。一刻の幻。眠くなってしまう程、心が満たされていく。暖かな日差しの中で、私は幸せとは満たされるとは、何かを深く深く噛み締めてゆっくりと眠りにつこうかしら。勿体ないと思うわ。でも、幸せに囲まれた今、この幸せのまま寝たいとも思うの。

 

 蝶の羽ばたきのような、散りゆく花びらの一枚のような、そんな儚いけれど美しく、満たされるこの時間を2人でゆっくり噛み締めて、生きていきたいわ。

 

 京華