小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

 不意に目覚めてしまい、もう寝れそうにないわ。ずっと起きている訳にも行かない。仕方なく私はタバコを吸う。両腕には枷が、首には首輪が、足には傷が痛々しく残っている。体は無数の傷が転々とある。致し方ないこと。致し方ないこと。と割り切ってしまえばなんともない傷。でも、やっぱり世間体は気にしてしまう。悲しい性。見栄えがよく、綺麗な体であれば良かったのにとどれほど思ったことか。赤い点々が無数にある身体。醜い醜い醜い。今夜は寝れそうにない。生きるためには必要な枷かのかもしれない。ずっしりと重い枷。血の涙。傷口の痕。私は一体、いつ寝れるのか、いつ壊れるのか。いっその事、壊れて錯乱してしまえば楽になるのに。私にはそれが出来ない。

 

 枷は重い。じゃらじゃらと音を立てる。首輪は奴隷の証。引っ張っても取れやしない。食料は沢山あるのに食べる気になれならなくて、私はタバコを吹かす。それだけの存在。文は私を救ってくれると過去には言った気がするけど、結局は私を救ってくれるのは過去だった。過去が私を形成していた。


 餌がくる。今度の餌は何か。チョコレートケーキ。私が苦手なのをしってて餌は運ばれてくる。狭い部屋という檻の中で、私はケーキに手をつけない。怒ったのかなんなのか、口に突っ込まれた。抵抗はしたが手枷が私を縛り、口に無理矢理突っ込まれた。美味しくない。と言うより味がしない。ふわふわしたものが私の口に入る。食え食えとどんどん突っ込まれていくケーキ。飲み込むことが出来なくて噎せた。それを拾い、また突っ込まれる。地獄だ。必死に飲む込む。ケーキを全部飲み込んだ時、また牢獄は閉じた。最近はいつもこうだ。死なないように高カロリーで私の嫌いなものばかり運ばれてくる。こんな深夜に食べるわけないのに。


 夜は地獄だ。タバコと過去だけが生きがい。その過去も今やどこかに落としてしまったみたいだ。タバコにまた火をつける。口元についたケーキの甘みがやっと感じられた。

 

頬を刺す朝の山手通り
煙草の空き箱を捨てる
今日もまた足の踏み場は無い
小部屋が孤独を甘やかす

静寂を破るドイツ車とパトカー
サイレン
爆音
現実界
或る浮遊

——椎名林檎罪と罰」より

 

 

京華