小鳥の遊び場

詩と文のライブラリ

ボロアパートの空

 心地の良い風が吹く季節。私の家は、まぁ、俗に言うボロアパートなのだけど、少し高台にあって、1階だから、2階からほどではないのだけれど、少し見晴らしがいいのね。隣の2階ぐらいは見えるぐらいなのだけど、見晴らしが良くて、風が気持ちいいわ。外置きの洗濯機も気にならないぐらい、今日は心地の良い天気。そんな風景を見ながら、私はタバコを吸うの。煙が空へ飛んで行き分散して消えて行く。すぐ近くでは工事が。きっと道路や電車の線路なんかを作っているのね。


 遠くでクレーン車が見える。上がったり、下がったり。ああ、こんな景色、中々観れる事ないわ。嬉しいじゃない。

 

 2階に勝手に上がってしまったわ。もっと遠くが見えた。小さな山が見えたわ。何山かしら?ボロアパートでもいいところがあってね。この景色はとても美しく私には見えたの。階段を下る。途中、烏の鳴き声と共に黒い影が空を滑空していく。あの烏達もこの景色を見て、私達を嘲笑っているのかしら。人間は空を飛べない、こんな景色見れないだろって。


 工事の鉄を叩く音が聞こえる。それと共に怒号。新人さんでもいて、ベテランさんに叱られているのかしら。可哀想ね。でも、これがこの現場のやり方なんだわ。工具の音がジャラジャラ聞こえる。何年か後にはここは道路か、電車が通るのね。私達が便利に過ごせているのは職人のおかげだわ。ありがたいことよ。


 朝の空もいいけれど、昼の太陽も綺麗なものね。エル君が布団を干したいとボヤいているわ。残念ながら、私の家は道路に面しているので干すことはできそうにないの。我慢してちょうだい。除菌系のもの買ってくるから。


 クレーンが上がって行く。遠くへ高く高く。空へ登っていく。麒麟のような黄色い車体に白のフレーム。空へ伸びて行くフレーム部分。風が少し強くなったわ。揺れて落としたりしないでね。

 

 今回は家の事について書いてみたの。外はやっぱり刺激があって文が進むわ。クレーンが下がって行くように、私の文もここまでにしようかしら。


 明るい空。広い空間を独り占め。ふふ。美しい景色をタバコの火のように、私は明日には忘れてしまうのかしら。そうならないように、私は文にして覚えていく。

 


京華